あらすじ
キャスト&スタッフ
祖父:ベーラム・デブー役 ボーマン・イラニ Boman Irani

1959年12月2日ムンバイ生まれ。名脇役として多数の大ヒット映画に出演。2013年の日本でのヒットが記憶に新しい『きっと、うまくいく』(原題: “3 Idiots“ 2009年)では憎まれ学長役を演じたほか、『闇の帝王Don』(原題:“Don2”)、日本でもロケが行われた“Youngistaan”(ヤンギスタン)(2014年)にも出演している。最近のヒット作では”Happy New Year“(2014年)、『カクテル』(原題:“Cocktail”) (2012年)など。今回の黄金製作チームが最初に組んで大ヒットしたコメディー”Munna Bhai M.B.B.S.”(ムンナバイ:ニセ医者ムンナ兄貴)(2003年)、“Lage Raho Munna Bhai”(ラゲ・ラホ・ムンナバイ:続・ムンナ兄貴)(2006)にも出演している。

父:ルスタム・ベーラム・デブー役 シャルマン・ジョシ Sharman Joshi

1979年3月17日生まれ。2006年の”Rang De Basanti“(ラング・デ・バサンティ)で主役アーミル・カーンの友人を演じ注目される。その後もヒット作に出演を続け、『きっと、うまくいく』で、一番貧乏で小心者の学生ラジュー役に抜擢される。本作が初の主演作となる。ボリウッド以外にもテレビ番組の司会として活躍。

息子:カヨゼ・ルスタム・デブー役 リトウィク・サホレ 

映画撮影時11〜12歳だったムンバイ出身の少年。モールのファーストフード店で家族と食事をしていたところ、スカウトされる。サッカーが好きだがサチンのことも大好き。映画でのお気に入りシーンは父親役のシャルマン・ジョシが銀行に行ってローンのために話をするところ。

特別出演(結婚式のダンスシーン) ヴィディヤ・バラン Vidya Balan

1978年1月1日南インド・ケララ州生まれ。2015年日本公開予定『女神は二度微笑む』(原題:“Kahaani” )(2012年)主演女優。2005年の大ヒット作“Parineeta”(パリニータ)でデビュー後、数多くの作品に出演。主演女優として5回、インドのアカデミー賞と言われるフィルム・フェア賞を受賞。 “Lage Raho Munna Bhai”にも出演している。

監督 ラジェシュ・マプスカル Rajesh Mapsukar

1968年9月26日ゴア近郊の港町生まれ。ムンバイで大学卒業後、広告映像制作の道に進む。『きっと、うまくいく』の監督であるラージクマール・ヒラニとは25年来の友人で、“Munna Bhai”を製作するところから映画製作を手伝い始め、“Lage Raho Munna Bhai”に続き『きっと、うまくいく』でも助監督を務める。『フェラーリの運ぶ夢』は初監督作品。

作品について
作品について

軽快な音楽と爽やかな朝のシーンで始まるこの映画は、息子・父・祖父の三世代の愛と絆と成長の物語だ。息子の夢を応援する父親が、息子を英国に行かせるための資金集めに奔走するのだが、ちょっとしたことが騒動に発展し、二転三転する事態に見る者も一緒にハラハラドキドキさせられる。

物語の舞台はインドの大都会で経済と流行の中心地ムンバイ。言わずと知れた映画の街で、監督もキャストもムンバイ周辺出身でムンバイに暮らしているということもあり、海に面したこの街と日常が明るくのどかに映し出されている。

製作は2013年日本でも大ヒットした『きっと、うまくいく』のチーム。前作まで助監督だったラジェシュ・マプスカルが初監督に挑戦した。『きっと、うまくいく』の監督ラージクマール・ヒラニとプロデューサーのヴィドゥ・ヴィノード・チョプラは脚本に協力している。このチームは、2003年に大ヒットしたコメディー“Munna Bhai M.B.B.S.”(ムンナバイM.B.B.S.:ニセ医者ムンナ兄貴)を皮切りに、2006年の“Lage Raho Munna Bhai”(ラゲ・ラホ・ムンナバイ:続・ムンナ兄貴)、2009年の『きっと、うまくいく』(原題:3 idiots)と大ヒット作を何本も生みだし、2012年の本作も大ヒットして海外でも上映された。

撮影期間は約1年にわたり、ロケはムンバイと英国ローズ競技場で行われた。クリケットの聖地と言われ格式高いローズ競技場では、通常撮影は許可していない。しかし物語の趣旨を話して粘り強く交渉した結果、ついに世界初のローズ競技場内ロケが実現した。

作品では、主人公の父子家庭の三人それぞれが実にいい味を出しているのだが、とりわけ主人公のカヨの少年らしいあどけなさとかわいさが際立つ。

実はカヨ役のリトウィク・サホレは、俳優でも映画関係者でもない一般家庭のごく普通の少年だ。キャスティングにあたってオーディションが行われ、約4,500人の応募があったが、どうもしっくりくる子がいなかった。そんなある日、キャスティング・ディレクターがムンバイのファーストフード店で食事をしていた時、たまたま家族で来ていたリトウィクに目が留まった。ディレクターはその場で母親に、「“3 idiots”(邦題『きっと、うまくいく』)の製作チームの次作にこの子を出演させてほしい」と直談判。半信半疑の母親は、翌日プロダクションのオフィスを訪ねて初めて、話が本当であることがわかり、リトウィクの出演が決まった。

監督は、できるだけ自然さを生かしたかったため、リトウィクに特に演技の指導をすることはしなかったという。ただし、リトウィクは実際にはクリケット少年ではなくサッカー少年であったため、クリケットの特訓が行われた。

実際に父子家庭を切り盛りする監督が、自分の父親のことも思い起こしながら描いたという本作は、ムンバイの日常を舞台に愛情あふれる作品に仕上がっている。

上映劇場

この情報は、2015年5月1日現在のものです。
上映劇場が変更となる場合がありますので、上映の有無や営業時間など、劇場サイト等でご確認の上ご来場下さい。

地域 劇場名 上映期間
山形 イオンシネマ米沢 2/28土〜3/13金
群馬 プレビ劇場ISESAKI 4/4土~
東京 イオンシネマむさし村山 6/13土~
東京 イオンシネマ日の出 6/13土~
東京/神奈川 イオンシネマつきみ野 2/21土〜2/26木
神奈川 小田原コロナシネマワールド 3/28土~4/10金
東京/千葉 イオンシネマ市川妙典 2/21土〜4/10金
千葉 イオンシネマユーカリが丘 2/21土〜3/6金
茨城 イオンシネマ守谷 2/21土〜3/13金
石川 イオンシネマ金沢 2/21土〜3/6金
愛知 イオンシネマ豊川 2/21土〜3/6金
愛知 イオンシネマ名古屋茶屋 2/21土~3/13金
愛知 半田コロナシネマワールド 3/28土~4/10金
岐阜 大垣コロナシネマワールド 3/28土~4/10金
富山 氷見キネマ 5/2土~
福井 福井コロナシネマワールド 3/28土~4/10金
大阪 テアトル梅田 3/14土~3/27金
大阪 シネ・ヌーヴォ 3/28土~
兵庫 Cinema KOBE 6/13土~19金

もっと知りたいインド映画講座
〜その1 クリケットではじまった
インドのスポーツビジネス大国化

インド人と仲良くなるにはインド映画とクリケットの話をするのが一番の早道だ。『フェラーリの運ぶ夢』にはこの2つの要素が揃っている上に、台詞にはいまのインド社会を知るために格好の情報がふんだんに盛り込まれている。

インドの国民的スポーツはサッカーでもカバディでもなくクリケットだ。日本ではまだまだマイナーではあるけれど、英連邦諸国ではクリケットこそが国民最大多数の支持を得た人気スポーツだ。とりわけ経済成長が著しく国民人口12億人中の過半数が26歳以下の若者で占められている世界最大の若者大国インドではクリケットが巨大なスポーツ・ビジネスになりつつある。

4年に1度開催される国別対抗のワールドカップの期間、インドの男子は大人も子供も一日中テレビに釘付けになる。大人は仕事どころではなく、子供は学校どころではない。母や妻やガールフレンドはそんな男子に呆れながらも寛容だ。2011年のワールドカップではインドが83年大会以来の優勝国となったが、その時は老若男女、貧富貴賎の隔てなく、インドの国民が勝利に歓喜した。

しかも、2008年からはクリケットをめぐるお祭り騒ぎは年中無休のようになってきた。この年、都市対抗のプロリーグIPL(インディアン・プレミアリーグ)が始まったからだ。カヨの祖父が嘆いているのは、こうしたクリケットの巨大ビジネス化というわけだ。 スポーツのビジネス化はいまやクリケットに止まらず、サッカー、ホッケー、バスケ、テニス、バドミントン、アメリカンフットボールなど様々なスポーツで進んでいる。

企業だけでなく、政府もスポーツ振興に力を入れはじめ、インドでもスポーツが「国威発揚」のツールになりつつある。これまで成績がさっぱりだったオリンピックについても今後は国を挙げて強化を図る方針で、インドはいま、スポーツ大国化への道を歩み始めたばかりだ。

フリージャーナリスト 小島卓

〜その2 クリケットとサチン・テーンドゥルカル〜

クリケットは野球の原型とされるが、野球と似て非なるスポーツである。基本的な考え方から異なる。野球はピッチャーが守備側でバッターが攻撃側という認識で動いているが、クリケットは全く逆で、ボールを投げるボーラーが攻撃側で、バットを持つバッツマンが守備側となる。ボーラーは、バッツマンの裏に立つ三本の棒(ウィケット)を倒すためにボールを投げ、バッツマンはウィケットを守るためにバットを振る。よって、ウィケットさえ倒れなければ空振りしても何のペナルティーもない。ただ、バッツマンがボールを打ち返したり走ったりすることで得点が加算される点は野球と考え方が似ている。基本的に打って走ることで1点ずつ加算されるが、打ち返したボールがフィールドの外にゴロで出ると4点、ノーゴロで出ると6点となる。映画を見て興味が出たら、日本クリケット協会のホームページに詳しいルールが載っているので見てみてほしい。

インドのクリケット界を代表する選手がサチン・テーンドゥルカルである。野球で言えばホームランバッターであり、世界最高のクリケット選手の一人に数えられている。16歳でインド代表としてデビューし、以後20年以上に渡ってインドのクリケットを牽引して来た。人柄も良く、人々からとても愛されている。2013年に完全引退してしまったが、この映画が公開されたときはまだ現役の選手だった。

サチンはカーマニアとしても有名で、実際にフェラーリを所有していた。モデルは360モデナである。ただ、彼は2011年に第三者に売却している。こういった経緯もあって、映画に登場したフェラーリは、実際にサチンが所有していた360モデナであるようだ。第一にサチンはインド人なら誰でも知っているほどの有名人であり、第二に彼がフェラーリを所有していることも周知の事実であるため、この映画のようなストーリーが成立した訳である。

インド映画研究家 高倉嘉男

〜その3 インドの政治家

インドは世界最大の民主主義国である。有権者数は8億人以上。最近の総選挙は1ヶ月間、9期に分けて投票が行われた。これほどの規模を誇る選挙は地球上のどこにもない。また、インドは多様性の国であり、様々な社会的背景の人々が時に対立しながらも共存している。このような複雑な国における民主主義の成功は、そのまま民主主義そのものの成功とされる。インドの選挙がしばしば「民主主義の祭典」と呼ばれるのは、そういった理由からである。

しかしながら、インドの民主主義は様々な問題も抱えている。独立以降、インドの民主主義は徐々に、宗教やカーストなど、所属コミュニティーに立脚した票田政治に陥って来た。各コミュニティーの利害を代表する政治家が乱立し、有権者は国や地域の利益よりも自分の属するコミュニティーの利益を考えて投票するようになった。わざとライバルのコミュニティーとの対立を煽って集票につなげるという手段も採られるようになった。こうなると、民主主義は社会の分断をもたらす。

社会の分断は、マフィアやならず者たちの政治家化も促した。有権者が立候補者の人柄よりも宗教やカーストなどを基準に投票するからだ。また、選挙時に有権者にタダ酒を振る舞ったり金品を配ったりして票を買収するのはインドでは公然の秘密であり、不正に手を染めるほど当選しやすい環境もあった。現在でもインドには前科や重犯罪の容疑を抱えた政治家が少なくない。最近まで国会議員には重犯罪による有罪判決を受けても任期中なら刑に処せられないという特権があり、これも犯罪者を政界に誘引した。

映画中に出て来る政治家ターティヤーは、日本で言えば都議会議員に最も近い。彼が拠点とするワルリー・コーリーワーダーは漁民の町である。大都市ムンバイーにあって、決して裕福な人々が住む地域ではない。当然、ターティヤーは彼ら貧しい漁民たちの利害を代表する政治家ということになる。また、すぐに銃をぶっ放すその性格から、地元マフィア上がりの政治家であることがうかがわれる。貧困層からの支持を維持するため、慈善活動の一環として、お金がなくて挙式できない人々のための合同結婚式を主催したりするが、強引に200組集めようとする辺りからも、決して善良な政治家ではないことが分かる。ただ、馬鹿息子に手を焼いているところに愛嬌があり、単なる辛辣な政治家批判で終わっていないことが映画を明るくしている。

インド映画研究家 高倉嘉男

〜その4 インドの結婚式

結婚式はインドにおいて最重要の通過儀礼で、単に個と個の結びつきに留まらず、家族と家族、コミュニティーとコミュニティーの結合でもあり、一族郎党の名誉と威信を賭けた一大イベントでもある。自国の文化を大事にするお国柄にあって、伝統や慣習が最も強く表出する場面でもある。このときほど宗教やカーストが重要な意味を持つ機会はない。

インドの結婚式は、宗教、カースト、地域などによって異なるが、映画でよく登場するのはヒンドゥー教の結婚式だ。ヒンディー語映画の拠点がマハーラーシュトラ州の州都ムンバイーにあることもあって、マハーラーシュトラ式の結婚式が多いが、業界内にはパンジャーブ地方出身者も多く、パンジャーブ式の結婚式もよく見掛ける。

インドの結婚式は、準備段階の儀式を含めれば1週間前後の期間に渡って行われる。お見合い段階や婚約式などを含めれば、さらに1年前後の期間に及ぶのが普通だ。

結婚式直前の儀式として映画にもよく登場するのはサンギートとメヘンディーだ。サンギートは通常、式の数日前に行われる。新郎新婦の家族や親戚(主に女性)が集い、一緒に歌ったり踊ったりして親睦を深める。メヘンディーは式の前日に行われることが多い。新婦の全身にターメリックを塗った後、ヘナと呼ばれる植物の染料で手などに美しい模様を施す。ヘナの色素はタンパク質に絡み付く性質があり、塗った部分の皮膚は赤く染まる。この色は1週間ほど持続する。また、このとき新郎の身体にもターメリックが塗られる。ターメリックは肌を若返らせる効果がある。

式当日の儀礼として特徴的なのがバーラートだ。新郎が家族親戚や友人たちを引き連れてパレードをしながら新婦の家を訪れる。このとき新郎は白い馬に乗るのだが、時代の変遷と共に、自動車に乗る新郎も増えて来た。どちらかと言うと田舎の方が自動車に乗り、都会の方が馬に乗る傾向にある。都会では馬の方が珍しいし、田舎では自動車自体がまだまだステータス・シンボルということであろう。ただ、さすがにフェラーリに乗るという発想は全く一般的ではない。

結婚式のメインはサート・ペーレーと呼ばれる儀式だ。新郎新婦が火の周りを7回回る。1回回るごとに夫婦の誓いを火の神様に対して1つずつして行き、合計7つの誓いをする。これが済むことで正式に2人は夫婦となる。この映画ではサート・ペーレーは登場しなかったが、他のインド映画で目にする機会は多い。

インド映画研究家 高倉嘉男